最初はほんの出来心だった。怒りに我を忘れたと言い換えてもいい。
本当ならもっと簡単な方法だってあったはずだ。
すぐにばれるかもしれない嘘と、その嘘に信憑性を持たせるための理屈をわざわざ考え、ごり押しで通すなど、無駄骨でしかありえない。
結果しかも、僕は冷静に対処も出来ず、状況は悪化の一歩をたどっているではないか。
あの時、長門有希があんなことを言い出さなければ──。
すぐに否定されるものだと高を括っていた。そうなれば笑って一言、冗談です、で済ませられたのだ。
彼女が嘘を吐くことなどあり得ないと思っていた僕は、相当動揺した。彼に気づかれなかったのは幸いだった。
それとも実は、彼女は真実を述べていたのだろうか。僕にしたあの説明のほうが嘘だったとしたら?
機関の宗旨替えも、僕がとった行動もすべて、本当は涼宮ハルヒが望んだことだとしたら。
「僕らはとんだピエロってことか」
力ない笑みが口からこぼれ落ちた。笑いたくもないのに、体が勝手におかしな声を出す。くつくつと喉が鳴る。
誰かが僕に笑えと言っているのだろうか。
嘘からでた真、という諺が頭の片隅に浮かんで消えた。
僕は、操られているのか。
彼に対するこのどうしようもない、ぐちゃぐちゃで何の形もとらない、原生生物のような思いも、本来あるべきものではなかったのか。
そうであれば、どれだけ気が楽になるだろう。
そうであって欲しい。もうたくさんだ。こんなに苦しい思いまでして、一体これが何になる?
ベッドに投げ出した携帯が、終わりを告げるように鳴り響いた。とある映画のエンディングテーマ。
体が重い。引きずるようにして体を起こし、胡乱な目で音源を探す。
やっとスタッフロールか。もう席を立っても良いだろう。
ボタンを一押し。小さなディスプレイに文字が踊る。
「明日ハルヒをデートに誘った。これで満足か」
そう、書かれてあった。
これはハッピーエンドと言えるだろうか。